あらすじからネタバレまで丸わかり!
美しい映画を観たいとき
はまり役の綾野剛を観たいとき
日常から逃げ出したいとき
映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』がオススメ!
日常がいつのまにか「おとぎ話」になってしまうようなこの物語。
観終わった後にあなたはきっと、あなたの日常を大切にしたくなりますよ。
本記事では、
- 映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』のあらすじは?
- 『リップヴァンウィンクルの花嫁』の見どころ
- ネタバレは?
- 衝撃の事実はここ!
- 感動の瞬間はここ!
- 『リップヴァンウィンクルの花嫁』の感想は
- 評価は?
これらをピックアップします。
特にネタバレの「リップヴァンウィンクルの花嫁」ではこの映画の最も素敵なシーンを知ることができますよ!
もくじ
『リップヴァンウィンクルの花嫁』あらすじ
「ネットで買い物するみたいに、あっさりと手に入ってしまった」
主人公の七海は人混みで、鉄也を待っていました。
彼は気さくに話しかけるも、ぎこちないです。
二人は出会い系サイトで知り合い、初めて顔を合わせたのでした。教師をしているという共通点もあり、二人は順調に距離を縮めます。
彼氏ができ、プライベートには進展があったものの、仕事の方は行き詰っています。
教師とはいえ、非常勤講師はいつ仕事を回してくれるのかわかりません。声が小さいという欠点から、七海は生徒には舐められています。
ある日、教室へ向かうと教卓の上にマイクが置いてありました。
「これは何?」
不安げに七海が尋ねると生徒が待っていましたと言わんばかりにこう答えます。
「先生、今日からこれ使ってね」
「声が全然聞こえないからさあ」
「アハハハハハ!」
教室はどっと笑い声が響き渡ります。
彼女は恐る恐るマイクを手に取り、口元に近づけて話してみると、か弱い声が響き渡り、教室はますます笑いに包まれました。
歳月は過ぎ、七海は鉄也と結婚することになりました。
生徒たちには「寿退社」と誤魔化しましたが、本当は、彼女は解雇されたのです。教室でマイクを使用したことが学校側で問題になりました。
学校最後の日、職員玄関を出ようとするところに、クラスの女子生徒が駆け込んで来ました。
「先生、結婚おめでとう」
手渡されたのは白を基調とした美しい花束でした。
「ありがとう」
女子生徒の手から花束を受け取ると、職員玄関を出ます。
彼女を見守り動こうとしない生徒たちに気づき、花束の中をのぞいてみると、そこには一本のマイクが花々と一緒に束ねられていました。それに気がついたことがわかると、女子生徒たちは満足げに笑い声を高らかにあげながら逃げて行きました。
結婚式の代理出席
結婚式が近づくにつれ、七海と鉄也の家庭環境の違いが浮き彫りになります。
それは親戚づきあいでした。
鉄也側の親族・親戚が20人程度出席するのに対し、七海の親族は父と母のたった二人でした。
「これじゃあ釣り合わないよ」
夫にそんな言葉を残されます。
仕事がなくなってしまった七海はコンビニでアルバイトをしていました。
「あれ?七海じゃない?久しぶり」
目の前にいたのは大学の同級生だった。
「もし良かったらウチに食べに来ない?」
アルバイトを終えると同級生の彼女の家で食事をしました。同級生に、結婚をするけれど親戚がいなくて困っている話をすると、ある人物を紹介されます。
翌日待ち合わせ場所に行くと、一人の男が待っていました。
「名前は色々あるんだけど、今回は安室と名乗ります」
トランプからカードを選ぶように名刺を一枚引き抜き、七海に手渡しました。彼女は少し驚いたようにそれを受け取ります。
「どんなお仕事をされているのですか?」
「まあ簡単にいうと、何でも屋です」
それから安室はタブレットを取り出し、あるサービスの概要を説明し始めました。それは、「結婚式の代理出席」です。金額は高いですが、サービスとして値引きをしてくれました。
そして迎えた結婚式当日。鉄也の親族にバレることなく、無事に式を終えることができました。
忍び寄る危機
新婚生活がすぐに始まりました。家具で綺麗に誂え、幸せな家庭です。
夫のために晩御飯の餃子を包んでいました。その時です。インターホンが鳴り、見ず知らずの男が家に上げろと言ってきました。
「僕は、旦那さんの浮気相手の彼氏です」
突然の告白に、七海は理解が追いつきません。
「コーヒーでも」
慌てて出てくる言葉は非常に呑気で、相手は余計に苛立ちます。
「あなた、浮気されているんですよ」
「あちゃあ・・・」
七海はますます相手を苛立たせます。
そして鉄也の部屋から卒業アルバムを取り出してきました。
夫は元教え子と浮気をしているというのです。
事実を告げると浮気相手の彼氏は出て行きました。
彼女は一人取り残され、呆然とします。しばらくして夫は帰ってきました。何事もなかったかのように振る舞います。
後日、七海は浮気相手の彼氏に呼ばれました。向かったのは都内のラブホテルでした。
「体で償ってもらうから」
男はそういうと七海に迫ります。七海は慌てふためき、抵抗します。
「トイレ・・・借ります」
トイレに駆け込むと七海はスマートフォンを取り出しました。
《助けてください》
助けを求めたのは、「何でも屋」の安室でした。
《どこにいますか?》
《五反田のホテルです》
《すぐに行きます。時間稼ぎしてください。シャワー浴びるとかして》
《わかりました》
七海は恐る恐るトイレを出ました。男はワインを飲んでいます。
「シャワー、浴びてきていいですか」
七海は俯き(うつむき)加減に言います。
「何をそんな怖い顔しているんですか。せっかくだから楽しみましょうよ」
七海は鍵をかけました。
ドンドンドン。外からノックが聞こえてきました。
男が扉を開けると、作業着を着た男が立っています。安室が駆けつけたのです。
「ねえもう帰っていい?」
「ああ」
そういうと、浮気相手の彼氏は荷物をまとめて部屋を出て行ってしまいました。
《着きました。出て来てください》
メッセージに気がつくと、七海はシャワーを止めてバスタオルにくるまってバスルームを出ました。安室が立っています。
「もう大丈夫です。追い払いました」
七海の誤算
鉄也の親戚の葬儀があり、七海と鉄也は鉄也の実家へ向かっていました。
「七海さん、ちょっと」
鉄也の母親は厳しい顔をして七海を呼びつけました。
「あなた、浮気してるんですってね」
母は七海に一枚の写真を見せました。それは、鉄也の浮気相手の彼氏を名乗る男と一緒にホテルにいる写真でした。
「浮気をしているのは私ではありません。鉄也さんの方です」
ところが母親はこんな証拠も持っているのでした。
~♪ シャワー、浴びてきていいですか
~♪ 何をそんな怖い顔してるんですか。せっかくだから楽しみましょうよ
「結婚式の親戚も、偽物だったんでしょ。あなたの何を信じたらいいのか」
こんな証拠を突きつけられたらどうにも叶いません。
「あなたが不気味で、汚らわしくてなりません。今すぐ出て行ってください」
母親がタクシーを呼び、荷物も適当にまとめて押し込まれるようにしてその場を去りました。
百万円のアルバイト
仕事もないし家もない。七海が助けを求めたのは、安室でした。安室はすぐに仕事を紹介します。聞き覚えのある仕事、「結婚式の代理出席」でした。
「今日はみなさん、家族ですから。仲良くしてださいね」
七海は花婿の親戚の家族の次女、カスミという役をもらいました。長女はキヨミという役です。
披露宴が始まると「家族」は一つのテーブルに着きます。
「あの花婿、別の家族がいるんだって」
「二重で結婚?それって犯罪じゃ・・・」
「犯罪だよ~」
披露宴が終わると緊張も解け、「家族」はそのまま食事に出かけました。
「なんだか本当の家族みたいねえ」
今日初めて会った人ばかりだったが、その日一日は家族のように過ごしました。
「私こっちですから・・・」
別れ際に七海が切り出すと、
「私もあっち!」
キヨミも方向が同じです。二人は連絡先を交換し、そのまま飲み直しました。
「もう仕事終わったから、キヨミって呼ばないで」
彼女は真白という名前でした。
店を出ると真白が見当たらない。二人は逸れてしまいました。
《今どこにいる?》
七海にメッセージが来ている。
送り主は、「リップヴァンウィンクル」。
《今日はありがとう、リップヴァンウィンクルさん。おやすみなさい》
翌日、安室が七海の前に現れました。
「新しい仕事があるんです。家事をやるだけで100万円なんですよ」
「え?」
「100万円。欲しくないですか?」
仕事というのは、家主が留守にしている間に家を片付ける、という内容でした。
着いてみると豪邸のような、同時に廃墟のような家があります。階段を登って大扉を開けると、パーティーで騒いだあとがそのまま残っていました。
「おはよう~起きてください~もう9時ですよ~」
七海が目をさますと、目の前には真白がいます。
「真白さん?どうしたんですか?どうしてここにいるんですか?」
「私もここでバイトしてるんだよ~」
こうして真白と七海の共同生活が始まりました。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』の見どころ
綾野剛の演技
ミステリアスな雰囲気とサービス精神を兼ね備えた演技派俳優の綾野剛さん。
彼の持ち味が本作の重要人物、「何でも屋」の安室に十分発揮されています。
彼が七海の人生を「おかしな方向」へと連れて行くキーパーソンです。
「結婚式の代理出席」「百万円のアルバイト」。
その仕事には社会の闇を感じさせますが、同時に都合のいい話でもあります。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』ではそんな両面性を感じさせる綾野剛さんの抜群な演技をご覧になれます。
幻想的な世界
そしてこの映画の最大の魅力は幻想的な世界に浸れることです。
冒頭でもお話ししましたが、その幻想的な景色はすぐにはやって来ません。
七海のうまくいかない日常が安室の登場で少しずつ変化していきます。そして気がつけばいつのまにか幻想的な、おとぎ話の世界に連れ去られてしまうのです。
その世界を作り上げているのは音楽、衣装、そしてクラゲです。美しいクラシック音楽や日常では着ない衣装、優雅に漂うクラゲが別の世界へと七海を手招きします。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』ネタバレ!
花嫁の離婚は、夫の母の仕業だった。
話は七海の離婚に戻ります。
彼女は夫が浮気をしていると思っていました。「夫の浮気相手の彼氏」という人物が自宅に駆け込んできたからです。ところが、これは夫の母親の仕業だったのです。
実はこの母親、息子を溺愛する過保護な母親でした。
鉄也は週に2回ほど外で夕食を済ませることがあったのですが、その相手が母親だったのです。母親は息子を溺愛するあまり週に二回も東京へ訪れていました。そして次第に「息子を取り戻したい」という気持ちが生まれてきたのです。
すると母親は、浮気をでっち上げて強引に離婚させようと考えました。
そこで出てきたので「何でも屋」の安室です。彼に七海の浮気の「証拠」となるビデオを録画するよう頼みました。浮気相手の男を手配し、鉄也が出勤している時間帯を狙って自宅に押し込ませたのです。
つまり、安室という男は七海に協力しながら七海を陥れていました。
ではここからは話の流れを戻します。
真白の秘密
早朝、七海が目を覚ますとソファーの上に真白がいました。
「女優」の仕事があるはずの真白が出勤もせず死んだように眠っているのです。
~♪
すると真白のスマートフォンが鳴り出しました。
「あの、もしもし」
「真白?あんた誰?」
「いや、あの、私は真白さんと一緒に住んでいる友人です」
電話主は真白のマネージャーでした。現場に来ない真白に電話をしたのです。七海は真白の額に触れてみました。真白は高熱を出していました。
「すぐに行く」
しばらくすると、マネージャーが車でやってきました。
「どうやって真白を運ぶ?」
七海が試しにマネージャーをおんぶしてみます。
「いけそう?」
「はい」
ぐったりとしている真白の上体を起こし、七海がおんぶします。
「大丈夫そう?」
「軽いです」
「なにそれ、私が重いみたいじゃん」
「いや、そうじゃなくて、軽すぎます」
七海におぶられた真白の腕は、折れそうなほどにやせ細っています。
「とにかく病院に行こう」
車に揺られても真白は起きません。
「真白さ、ちゃんと食べてる?」
「はい、食べてると思います…」
「あんまり痩せちゃうとさ、困るんだよね。仕事なくなるし」
「どんな仕事ですか?」
「AV」
「え?」
真白のいう「女優」というのは、AV女優のことだったのです。それを知らなかった七海は驚きを隠せません。
「真白から聞いてなかった?」
「はい…」
しばらくすると真白が目を覚ましました。
「あれ?どこに向かってるの?」
「病院」
「病院?仕事は?」
「今日は休んでもらう」
「ダメだよ。現場行かなきゃ」
真白は車から降りようとします。
「現場行かなきゃ!現場行かなきゃ!」
パニックになる真白を七海が押さえ込もうとしますが七海の力では抑えきれません。停車したタイミングで真白は車から飛び降りました。それを見たマネージャーが慌てて彼女の後を追います。
「わかったわかった。現場に行こう」
現場に入った真白。マネージャーが話し始めます。
「昔ここが何だったか知ってる?」
「レストランだったの。でも撮影場として改装してね、そしたら真白が気に入ったの」
「ってことは、ここに真白さんが住んでるんですか?」
「そうよ」
「よしよし今日も頑張ったね」
マネージャーが自宅のソファーに倒れこんだ真白に言います。
「じゃあ、後は頼んだよ」
七海は安室に電話をかけました。真相を聞かれた安室は、クライアントを裏切ることになるので答えられないと言います。
「真白さんは、お友達が欲しかったんです」
「このことは知らなかったことに」
そう言って電話を切りました。
リップヴァンウィンクルの花嫁
夜、真白はクラゲの入った水槽の前で薬をかじりながらお酒を飲んでいました。
「ダメですよ真白さん。薬を飲みながらお酒なんて飲んだら」
「全然眠れないの」
七海が真白の手からグラスを取りました。
「私、もうこの仕事辞めます」
七海が切り出しました。真白は驚いた顔で振り向きました。七海は真白が安室に仕事を依頼していることを知ってしまったと打ち明けます。
「自分の身体、もっと大切にしてください」
七海はボロボロになって行く真白に心が痛み、涙ぐんでいます。
「こんな贅沢な大きい家に住むんじゃなくて、もっと身の丈にあった家に住みましょう」
「じゃあさ、引越ししようか」
翌朝。二人は都内のアパートに来ていました。
「ここの物件どうですかねえ」
「もうちょっと、見晴らしがいいところがいいなあ」
一軒目の物件は手を伸ばせば電柱にぶつかってしまいそうなくらい窮屈な立地でした。
二件目の物件は二部屋合わせて三十畳あるだけでなく、都会の景色が見渡せるような二人にとって理想的な物件でした。
「ねえここにしようよ」
真白は嬉しそうに言います。
しかし家賃は一ヶ月で40万。七海は悩みましたが、真白のわがままを聞きました。
帰り道。真白が興味津々にお店の中を覗いています。中には美しいウェディングドレスがずらりと並んでいます。
「お客様ご予約されていますか?」
「いや、予約とかは・・・」
店員さんが二人に気がつきました。
「よかったら見学されて行かれますか?」
「はい!」
真白は戸惑う七海の手を取り、中へ入って行きました。純白のウェディングドレスがライトアップされ、光り輝いています。二人はうっとりとしながら夢中で眺めています。
「よかったらご試着されますか?」
「記念撮影も無料で行っているんですよ」
ウェディングドレスを着た美しい二人は教会で写真を撮り、指輪交換ごっこをし、そのまま車に乗りました。
耽美的(たんびてき)な瞬間
真白のお屋敷で、二人はワインを開け、音楽に合わせてダンスを踊り、ピアノを引いて特別な時間を過ごしました。まるで二人は本当に結婚をしたように、幸せそうな表情をしています。
体を動かすたびにドレスのスパンコールがきらめき、柔らかいチュールの裾がふわふわと揺らめきます。時はゆったりと、二人だけのために過ぎて行くようです。
二人はドレスを着たままベッドの上に寝転がりました。
「私はね、人より幸せの限界がくるのが早いんだ」
真白がおもむろに話し始めました。
「コンビニで店員が私なんかのために商品をせっせとビニール袋に詰めてくれたりなんかしてさ。宅配便のオヤジが私のところまで荷物届けてくれたりさ」
「お金はそのためにあるんだよ。優しさとか真心とかが見えちゃったら、ありがたくてみんな壊れちゃうよ」
七海は真白の顔をじっと見ています。
「だからさ、幸せはお金を払って手に入れるんだ」
七海は少しだけ悲しそうな顔をします。
「私と一緒に死んでって言ったら、死んでくれる?」
「…はい」
「バーカ」 真白は愛おしそうに笑いました。
「はい」
「ありがとう」「愛してるよ」
翌朝、真白の屋敷の扉を開けたのは黒装束の安室と葬儀屋でした。
葬式の出席
「どちらが真白さんですか?」
「こちらです。そして隣の女性が真白さんの友人です」
ドレスを着た二人がぐったりと倒れています。葬儀屋は真白が何かを握ったままであることに気がつきました。
「これはなんですか?」
「貝です。毒を持っているんです。真白さんから昨日こんな連絡があったんです」
悲しい事実
《明日死ぬからよろしく》
「真白さんは末期ガンでした。一人で死ぬのが怖くて、一緒に死んでくれる相手を探して欲しいという依頼がありました」
「そんなお仕事もするんですね。費用はいくらですか?」
「一千万」
「一千万!?」
すると、七海がむっくりと起き上がりました。二人は大慌てです。
「な、七海さん、死んだんじゃ・・・」
「おはようございます」
「だめ、真白さんに触っちゃダメ」
「真白さん?真白さん?真白さん?」
真白はピクリとも動きません。
七海は動揺して真白に近づこうとしますが、毒の回った体を触っては危険だと二人が引き離します。するとますます七海は混乱し、泣きじゃくります。
葬儀はすぐに始まりました。
結婚式場で出会った「家族」も駆けつけました。身寄りのない真白は、「家族」の手で出棺されました。
真白の遺骨を届けに真白の母親の元へ安室と七海は向かいました。母親は真白の遺骨を受け取ろうとしません。
「飲み物何がいい?焼酎でいいかい?」
「いや、僕は運転するので・・・」
3人分注ぐと母親は一息に飲み干しました。日頃呑んだくれているのか、声はしゃがれています。
「お母さんいい飲みっぷりですねえ」
安室は持ち前のサービス精神で母親をおだてますが、母親は表情一つ変えません。
「わたしゃあいつなんかの骨は受け取れないね。十年前に出て行ったきり、行方知れずだったんだよ」
母親は焼酎を注ぐと、もう一口飲みました。
「人様の前で裸になるなんて、まともな人間のすることじゃないね!」
そういうと母親は靴下を脱ぎ、それを仏壇の前の真白の遺骨に向かって投げつけました。二人は心配そうに見つめています。
衝撃の瞬間!
「お、お母さん?」
すると母親はシャツのボタンを外し始めました。その手は休むことなく衣服を体から剥がしていきます。
「お母さん、ここはおトイレではないんですよ」
安室の混乱する声も届かず、全ての衣服を脱いだ母親は素っ裸になりました。
「裸になっても、恥ずかしいだけだ・・・」
すると母親は泣き出しました。
娘の骨を受け取ろうとせず、悲しい顔一つ見せていなかった母親が、急に泣き出したのです。
母は、体を張ってお金を稼いでいた娘の気持ちを理解しようとしていたのでした。
裸になってみると恥ずかしい。
こんな思いで娘は仕事をしていました。そして先に逝ってしまった。様々な思いが一気にこみ上げ、涙となって溢れ出したのでした。
すると、堰(せき)を切ったように安室も泣き出しました。
これまで白々しく胡散臭かった安室が、まともな人間に見えた瞬間です。安室は声をあげて涙を流し、そのまま服を脱ぎ始めました。
二人は隣り合って真白の仏壇前で手を合わせます。そんな感極まった二人を見て、七海の心も突き動かされ、さっきまで口をつけていなかった焼酎を口に含みました。
「おいしい!」
泣きながら七海は焼酎を飲みました。
三人は真白の死に対する悼み、そして懸命に生きた彼女に対する尊敬の念を抱きながら、いつまでも涙を流しました。
再出発
翌日、七海は都内のアパートに引っ越しました。
こじんまりとした部屋です。安室がやってきて、いらない家具を七海に譲りました。それらを部屋に収めると、家らしい空間が出来上がりました。
「また、いつか」
二人は握手をしました。
トラックで走り去っていく安室を、七海は見えなくなるまで手を振り続けました。
七海がベランダから新しい街を見渡します。
爽やかな風が吹き抜け、七海の頬を撫でていきました。
評価は?
評価 ★★★★☆4/5
『リップヴァンウィンクルの花嫁』、
評価は、星4つです!
その理由は、
- 幻想的な世界観に引き込まれたこと
- キャラクターの内面がぐっと伝わってきたこと
- 「観たい絵」がたくさんあったこと
残りの星1つは、岩井俊二監督の今後の作品への期待を込めました。(笑)
これからも素晴らしい作品を取り続けて欲しいです。
感想
リアルな日常をおとぎ話の色めがねで覗いているという感じがしました。
七海は引っ込み思案な女性です。
本当は誰にも迷惑をかけずひっそりとしていたいのに、どういうわけか他人を怒らせてしまいます。声が小さいという理由で生徒からマイクを渡され、彼らに迷惑をかけたくなかったから受け取っただけなのに解雇をされます。
夫の浮気相手の彼氏が家に押し寄せて怒りに震えていたから彼の要求を聞いただけなのに、結局は濡れ衣を着せられ、家から追い出されます。彼女は必要以上に純粋で、不器用です。
そんな彼女の不器用さに、共感するところがありました。上手くいかない日常の場面を思い浮かべながら、彼女と自分をどこか重ね合わせてしまいます。
そしてそこに現れた、胡散臭い「何でも屋」の安室行舛(アムロ行きます!笑)。
彼の存在が、おとぎ話の森の奥のような危険な翳り(かげり)を差し込みます。そしてもう一人の重要な人物、真白がファンシーな要素をうまく引き出してくれています。
こんな風にキャラクターや彼らにまつわるエピソードやアイテムが『リップヴァンウィンクルの花嫁』のおとぎ話的な部分を構成しているようでした。
最後の真白の母親と安室と七海のシーンですが、これは魂と魂が初めて触れ合ったのだと解釈しています。文章にしてみるとそのニュアンスが伝わっているか自信がないのですが、
「これまで胡散臭かった安室が初めて人間味を帯びた」
と考えています。そういう意味で、この演出はこの映画の中で最も力強いと思います。
七海の感情がダイレクトに伝わってきながら、観ている光景そのものはファンシーで、とっても大好きな映画でした。
もう本当に、この世界に入ってしまいたいです・・・。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』観たくなりましたか?
いかがでしたか?
今回は映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』のあらすじとネタバレについてお伝えしました。
この映画や監督に興味を持った方は是非実際にご覧になってください!
幻想的な世界観とストーリーに引き込まれてしまいます。
予告編はこちらになります♪
『リップヴァンウィンクルの花嫁』をもっと詳しく知りたい!
そんな方はこちらもお読みになってください♪
→映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』主題歌、綾野剛とタイトル意味を解説!
公開日
2016年3月26日 日本
ジャンル:ドラマ
監督・脚本
岩井俊二
キャスト
- 皆川 七海(みながわ ななみ) – 黒木華
- 安室 行舛 (あむろ ゆきます)- 綾野剛
- 里中 真白 (さとなか ましろ)- Cocco
- 鶴岡 カヤ子(つるおか かやこ) – 原日出子
- 鶴岡 鉄也(つるおか てつや) – 地曵豪
- 高嶋 優人 (たかしま ゆうと)- 和田聰宏
- 滑(なめり) – 佐生有語
- 皆川 博徳(みながわ ひろのり) – 金田明夫
- 皆川 晴海(みながわ はるみ) – 毬谷友子
- 恒吉 冴子(つねよし さえこ)- 夏目ナナ
- 里中 珠代(さとなか たまよ) – りりィ
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このような映画は素晴らしい、ただあまりにも人の弱いところやコンプレックスを切り取って目の前日出してイルミネーション分神田にこの映画がすぎだけどと言って話し合うことが怖いCocoの幸せについての独白を聞いているところを横で知らない人に見られるくらないならすとっぱだかでいる方がましくらいに思ってしまった。